野生動物をめぐる現状を学び、「ジビエ」を味わいました

印刷用ページを表示する掲載日：2024年1月22日更新

1月20日（土）FabCafe Hida

飛騨市民カレッジのアカデミック講座「森のごちそう『ジビエ』から学ぶ野生動物との新たな暮らし～見て・触れて・味わって～」が、古川町のFabCafe Hidaで開催されました。

飛騨市民カレッジは、アカデミック講座をはじめジュニア講座、公民館講座、誰でも自主講座、シニア講座など５つの講座があり、受講やレポートの提出などを行うごとに単位や学位を取得し、誰もが楽しみながら学ぶことのできる飛騨市の生涯学習の場です。このうちアカデミック講座は、普段はなかなか会うことのできない、各界の第一線で活躍している方々を講師に招いて直接学ぶことのできる貴重な機会です。今回は、今年度最後となる６回目の開講でした。

この日は、岐阜大学社会システム経営学環・応用生物科学部野生動物資源学研究室の森部絢嗣准教授が、野生動物のおかれた現状、人間との関わりや新たな共生のあり方などの講義の他、狩猟で使う道具や動物調査に使う機器類の紹介などを行いました。動物の毛皮を見たり触ったりする体験や、野生動物の肉を調理したジビエ料理の試食もあり、盛りだくさんの内容でした。

森部准教授は、30年ほど前は捨てられたり身内だけで消費していた魚「ゲンゲ」や、10年ほど前にはあまり食べられていなかったシカが近年は見直され、料亭などで提供され始めた現状を紹介。「たった10年でも価値は変化する」とし、獣害対策などで駆除されたシカなどの野生動物も「もったいないから食べる」「家畜のえさにする」という考えでなく、「美味しいから食べる」「心地いいから使う」と考えていく方が健全ではないかと強調しました。また、多くの種類の森林植物を大量に食べるシカを例にあげ、「シカを食べるということは、地域の森林の植物を間接的に食べていることになる。私はこれを間接的森林食と呼んでいます」と紹介しました。

また、質問に答える形で、二ホンジカは昔から飛騨にもいたが、一時期捕られすぎて減ってしまったため保護政策が取られるようになり、その後徐々に増え、近年になってまた目立つようになったと現状を紹介。減っているところと増えているところがあり、地域によってムラがあるとも説明しました。

講義の後は、飛騨猟友会清見支部に所属する猟師で、ジビエ料理を提供する活動も行っている上屋薫里さんが用意した「鹿肉のロースト」「猪スジ肉の煮込み」「熊肉のしゃぶしゃぶ」を試食。参加者はシカの肉の柔らかさや、癖のない味わいなどに驚いていました。また、森部准教授が持参したイノシシやウサギ、ハクビシンなどの毛皮に触れて手ざわりを確かめたりしました。

この日は約15人が参加し、メモを取ったりしながら熱心に耳を傾けました。また、野生動物に対する考え方や受講して分かったこと、疑問に思ったことなどを近くの席の人と話し合ったり、森部准教授に質問して学びを深めました。古川町の古田裕子さんは「ジビエにはあまり興味はなかったのですが、森林環境に関心があって参加し、興味深い話を聞けました。ジビエを食べることで森が体に入って滋養になる『間接的森林食』の体験ができて良かった。思いがけずイノシシ肉が美味しかったです」などと感想を話していました。