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お寄せいただいた質問と回答 パート2

印刷用ページを表示する掲載日:2019年6月10日更新

ニュートリノ感じてますか??

サイエンスコミュニケーターの高知尾です。

前回に引き続き、ご来館いただいた方から頂いた質問に答えていきたいと思います。

今回は、ニュートリノにまつわる質問です。

 

質問1

ニュートリノが通り抜けるときは穴って開いてしまうのですか?

(ペンネーム もうすぐ6年生さんより)

 

回答

ニュートリノは何でも通り抜けてしまいます。そうすると、確かに穴ぼこだらけになってしまいそうです。何だか怖いですね…。でも、ニュートリノは、もうすぐ6年生さんの手のひらにも大量に通り抜けていますが、穴だらけになっていませんよね?

ニュートリノはとても小さいのです。その大きさは、人間の身長の1億分の1の1億分の1の1億分の1くらいです。

そうすると、ニュートリノにしてみれば物質はどれも、もともとスカスカの穴だらけなのです。

 

質問2

ニュートリノは1立方メートルの中にどのくらいあるのですか?

(ペンネーム K太さんより)

 

回答

ニュートリノは、もちろん神岡町だけにあるわけではなく、世界中にあります。もっと言うと宇宙に遍く存在しています。ただ、地球上にいる私たちにとっては近くに強大なニュートリノ発生源があります。なんだと思いますか?

 

 

そう、太陽です。

 

 

太陽からのニュートリノは私たちの身体、建物、街に常に大量に降り注いでいます。その量はどのくらいでしょうか?

 

それを教えてくれる展示物が実はカミオカラボにあります。

 

 スーパーカミオカンデがデザインされたアルミ缶

 

そう、見紛いようもなく缶です。アルミ缶です。

 

「スーパーカミオ缶デ」という粋な名前のこの缶は、スーパーカミオカンデの20周年を記念して作られたものです。この缶の中には飲料は何も入っていません。空気だけです。(別に飲んじゃったわけじゃないですよ!)

しかし、この空缶の裏面をよく見てみると、空気の他にも何か入っているようです。

 アルミ缶の裏面

拡大してみましょう。

 アルミ缶に記載された内容物表示

 

ニュートリノの成分表示…!?

 

ここには、そこら中にあるニュートリノがもちろんこの缶の中にも含まれていて、それがどこからどれだけ飛んできているかが詳細に書かれているのです。

 

上から3行目に「太陽ニュートリノ」と書かれた項目があります。これが、太陽から降り注ぐニュートリノの数を表しています。これによると、190mLに1秒間に3兆個のニュートリノが通過していると書かれています。

 

さらに良く読むと、他にも「大気ニュートリノ」や「超新星背景ニュートリノ」というものもあるようです。しかし、圧倒的に「太陽ニュートリノ」の数が多いことがわかります。

 

では、本物のスーパーカミオカンデ(缶じゃないよ)で観測しているニュートリノもそのほとんどが太陽ニュートリノなのでしょうか?

 

ところが、そう簡単には結論は出せないのです。それはなぜでしょう?

 

この続きは、また別の機会にいたしましょう。

 

質問3

ニュートリノが何かにぶつかったときに電子がはじき出されるそうですが、それで本当に人体には何も影響はないのでしょうか?

(ペンネーム ミュースカイさんより)

 

回答

まず、人体に影響を与えるためには人体を構成する粒子と何かしら反応する必要があります。ニュートリノの大きな特徴が「(ほぼ)なんでも通り抜ける」ということであるため、通り抜けてしまう限りは文字通り何の影響もありません。

 

では、質問にあるように「何かにぶつかったとき」はどうなるのでしょう?常に大量に降り注いでいるニュートリノだからそういうこともあるかもしれません。人間の身体にぶつかるとどうなるのか、少し心配になりますね。

 

そこで、まずは大雑把に計算してみます。

5万トン(5千万リットル)の水が入ったスーパーカミオカンデでは1日に30回くらいのニュートリノが観測されます。(観測されるということは、ニュートリノが水の粒子とぶつかるということです。)

では、人間の身体にはどれくらいの頻度でぶつかるかを知るために単純に体積で比較してみます。人間の身体はほぼ水でできているとみなすと60kgの人の体積は60リットルとなるので…

 

60L/50,000,000L × 30回/日 = 0.000036回/日 = 1回/76年

 

よって、人間が一生に1度ニュートリノにぶつかるかどうかくらいということになります。

運よく(悪く?)ニュートリノにぶつかった人は体内で電子やミューオンなどの荷電粒子(いわゆる放射線など)ができるので、DNAを部分的に壊すことも可能性としてはありうる話でしょう。

しかしながら、人間のDNAには自ら修復する機構が備わっているため、いずれ元通りになります。

ニュートリノに限らず、地球上に住んでいる限り私たちは常に空気中や岩石や食物から一定の環境放射線にさらされていますが通常はDNAの再生能力が壊れる頻度を上回っているため身体への害はありません。

一生に一度のニュートリノの衝突の影響は、心配する必要は無さそうですね。

 


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