11月11日(土) 市役所
医療や子育て、高齢者福祉など社会福祉分野の先進地といわれる北欧デンマークの現状や、さまざまな障がいのある人も充実したサポートを受けながら健常者の学生と同じように授業や余暇を体験できる学校「エグモント ホイスコーレン」の先進的な取り組みについて学ぶ講演会が、飛騨市役所で行われました。
神岡町出身で静岡大学地域創造学環4年生の中垣乃彩さんが、数カ月にわたるデンマークへの旅の途中で体験した1週間の短期留学で、同校の教員である深澤理恵子さんからデンマークの福祉のあり方などを学んで強く関心を持ち、先進地の現状を広く知ってもらたいと熱望。帰国後、脳性麻痺の障がいのある成川祥太さんとともに同校へ1年間の長期留学をした石川雄也さんと出会い、今回の講演会を企画されたそうです。
当日は、深澤さんがオンラインで「なぜデンマークは最先端の障害者福祉を実現できるのか」の演題で基調講演を行いました。デンマークでは、軽度の障がい者への支援が、大規模の入所施設や精神病院、養護学校などから地域へ移行されましたが、地域に十分な受け入れ体制がないことで不便になったり、住民との接触で敗北感や挫折感を味わう人が多く、元の施設へ戻りたいと希望する人が生じたり、元の施設には重度の人だけが残ることで職員の負担が大きくなった経緯などを紹介。これらの問題を受け、当事者の生活の質や尊厳、個別ケアなどを重視しながら、地域で障がい者の自立を支える仕組みが整えられてきたと説明しました。
デンマークでは、市民がなんらかの理由で生活できない場合は国が生活を保証する責任を持つべきだという国民的意識があること、周りの人やその意見を認めたうえで自分の意見をはっきり述べていくのが当たり前と考える文化があるなど、日本との違いも強調しました。
石川さんは、成川さんと体験した留学生活などをスライドや動画を使って紹介しました。日本では「危ないから止めよう」と言われるようなボルダリングや海遊びなども、障がい者本人が「やりたい!」という意思を持っていれば、その意思を尊重し、皆で協力してできる方法を考え実行する環境があったことを振り返りました。また「できるかできないかは分からなくても、大きな目標や理想があれば『やってみたい』から考える。それがすごく大事なこと」「達成できるかどうかは別として、挑戦してみることは誰にもできます」などと思いを語りました。
成川さんの母の寿子さんが開発した、車いすに合う、機能性の高いバッグ「solen(ソーレン)」のお披露目もあり、参加者はふれたり質問したりしながら見学していました。
この日は、市内外から50人ほどの参加者があり、熱心に耳を傾けたり講演者に質問したりしました。娘さんと一緒に参加した神岡町の堀美季さんは「福祉に特に関心があって聞きに来たわけではなかったのですが、楽しい感じの話が多く、特別なことじゃないのではと思いました。障がいのある人が身近にいなくて、福祉や介護のことにもあまり接することはないですが、自分にも何かできる環境があれば関わってみたいと感じました」と感想を話しました。
中垣さんは「個人的には今、福祉のバイトを始めたりとか新しい世界が見えてきています。この講演会を通じて、障がいがあっても誰でも挑戦できるんだよ、というところを皆さんに感じ取っていただき、『明日から頑張ろう!』という気持ちを持ってもらえたら」と話していました。