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プロフェッショナルなタクシー運転手(市民生活を支えるプロ特集)

印刷用ページを表示する掲載日:2025年7月8日更新

プロフェッショナルなタクシー運転手(市民生活を支えるプロ特集)

その道20年のタクシー運転手、古川タクシー株式会社の渡邊公一さんにプロフェッショナルならではの仕事観を伺いました。
ともすれば「ぜいたく」と思われがちなタクシーは、社会の高齢化や若者のニーズの変化とともに人々の日常に欠かせない存在となっています。
市民を思い、その生活に寄り添うタクシー運転手の姿をご覧ください。

地元古川にUターンしてタクシー運転手へ

──ご出身はどちらですか?

古川生まれ、古川育ちです。高校卒業後、東京の大学に進学し、都内で就職したのですが、長男として家族を支えるために地元へ戻ってきました。

──戻ってすぐに、タクシー運転手になられたのですか?

いえ、もともと運送業をしていたのですが、腰を痛めまして。腰への負担が小さい仕事を探していたところ、知人に声をかけてもらってタクシー運転手になりました。

​──タクシー運転手になったきっかけこそ腰痛でしたが、20年以上も続けてこられた理由は何でしょう?

お客様の「ありがとう」という言葉が 20 年余りのドライ バー人生を支えてくれました。

さりげない配慮で高齢者の日常をサポート

──どのようなシーンで「ありがとう」と言われることが多いですか?

日中乗車されるお客様の多くはご年配の方なのですが、スーパーへの送り迎えなどの際に、玄関口まで荷物を運ぶと喜ばれます。大したことをやったつもりはないのですが「ありがとう」と言われると嬉しいですね。

──ちょっとした用事でタクシーを利用される方もいらっしゃるんですね。タクシーってもっとぜいたくなものだと思っていたので意外です。

そう思われる方もいますが、実際には、自家用車に乗るよりタクシーを使った方が安く上がる場合もあるんですよ。もちろん、移動距離や頻度にもよりますが。

​──普段使いされるということは、顔見知りのお客様も多いのではないでしょうか。何度も顔を合わせる関係だからこそ意識しているポイントは何ですか?

観光などで一度きりのご乗車をされる方に対しても同様ですが、お客様一人ひとりに寄り添ったサービスを提供することです。例えば、運転手との会話を楽しみたい方もいれば、静かに過ごしたい方もいます。乗降車時のサポートを必要とする方、観光案内をしてほしい方など、さまざまです。だからこそ、相手に合わせた対応を大切にしています。これは、私一人だけの努力によるものではありません。タクシー予約の受付担当者がよく気がつく人で。お客様の事情を把握して「〇〇様は足を痛めているから、乗り降りの際にサポートをお願いします」といった内容を伝えてくれるので助かっています。

「怖い」という気持ちが乗客の安全を守る

──素敵なチームワークですね。お話を伺っていると、プロのタクシー運転手がプロたるゆえんは、いかに乗る人のことを考えられるか、だと感じます。接客の面に加え、運転面でプロならではの心配りはありますか?

お客様が安全に、快適に過ごせるように心がけています。お客様の体が揺れないように、ブレーキを優しく踏んだり、カーブの手前でしっかり減速したり。特に、小さなお子さんを乗せる際には気を遣いますね。わずかな揺れでも負担になるのではないか、ブレーキの反動で飛んでいってしまうのではないか、と。正直、怖いです。

​──ドライバー歴20年を超える渡邊さんでも、怖いと感じることがあるんですね!

ありますよ。それでいうと、雪道の下り坂なんかも怖いです。

──ベテランになると、怖いという感情を忘れてしまいそうな気がします。慣れた頃に事故を起こすとよくいいますが、20数年もの間、慣れずにいられた理由は何ですか?

人様の大事な命を預かっていますから。何年経とうと、怖いという気持ちが消えることはありません。

──今日お話を伺って、渡邊さんの温かさと強い責任感が伝わってきました。渡邊さんの顔を見たらほっとする、というお客様もたくさんいらっしゃるでしょうね。

そんなことはないと思いますが(笑)。でも、そうであったら嬉しいですね。今後も初心を忘れず、お客様に「また乗りたい」と思ってもらえるタクシー運転手を目指します。

あとがき

「こういうの(インタビュー)得意じゃないんです」と言いながらも、一つひとつの質問に対して真摯に答えてくれた渡邊さんの温かな笑顔が印象的でした。 私は、昨年の2月に第1子を出産しました。産院まで車で約1時間。出産予定日が近づくにつれ「陣痛がきたときに大雪が降ったらどうしよう」「路面が凍結していたらどうしよう」と不安になったものです。幸い、雪は降らなくて夫が産院まで送ってくれましたが、今思えばタクシーを頼る選択肢もあったかもしれません。渡邊さんのように責任感あふれるドライバーなら、きっと小さな命を乗せることを「怖い」と感じつつ、安全に産院まで運んでくれたはずです。悪天候のため自分で運転するのが不安なとき。怪我や病気、妊娠で体が思うように動かないとき。あるいは、年を重ね、体の衰えや注意力の低下を感じ始めたとき。タクシーは私たちの支えになってくれる心強い存在なのだと、インタビューを通して知りました。
市民ライター 三代知香

プロフェッショナルなタクシー運転手
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