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人生の厚みが、支える力に変わる。 プロフェッショナルなケアマネ・ヘルパー(市民生活を支えるプロ特集)

印刷用ページを表示する掲載日:2025年11月17日更新

人生の厚みが、支える力に変わる。 プロフェッショナルなケアマネ・ヘルパー

キャリアを重ねるほど、自分の天井が見えてくる──。そうしたベテランならではの悩みとは対照的に、人生経験を積むにつれて深みを増していく仕事があります。居宅介護支援事業所「まごの手」を管理するケアマネジャーの森谷和代さん、社会福祉法人吉城福祉会で訪問介護のヘルパーとマネジメントを担う菅沼由香里さんに、介護に関わる仕事の奥深さを伺いました。

人生経験がものをいう訪問介護の仕事

──お二方共、介護のお仕事の経験は長いのですか?

森谷さん:ケアマネジャーの経験は15年ほどです。もともと看護師 として4年間、病院に勤めていました。その後、子育て期間を経て、特別養護老人ホームで看護師の仕事を再開して働くこと20数年。ケアマネジャーという職業が誕生してすぐの頃に資格を取り、定年退職後は「まごの手」で居宅の介護支援を行っています。看護師も含め、人に寄り添う仕事が大好きで、まさに天職です。生涯現役でいたいですね。

菅沼さん:私はヘルパー歴は3年で、以前はデイサービスで介護職員兼、生活相談員として働いていました。生活相談員は、施設の利用者やご家族の困りごとに寄り添う立場です。

──以前の配属先や前職での経験が生きているのですね。デイサービスでの介護と、訪問介護の違いは何ですか?

菅沼さん:デイサービスでは、介護に適した環境が整っています。一方で、訪問介護の場合は、利用者さんのお宅にある設備や物品を活用し、各家庭のルールに沿って支援をすることが求められます。さらに、すぐそばに仲間がいる施設と異なり1人でお宅に伺うため、より対応力や柔軟性 が必要とされるのが特徴です。そうした能力は、人生経験ともいえる「生活の知恵」に下支えされるものと考えています。例えば、冷蔵庫の中に ある食材で、決められた時間内に料理をすることは、自炊の経験が少ない人にとってはなかなか難しいでしょう。吉城福祉会には70代のベテランヘルパーさんも在籍しており、その臨機応変さは私の想像を遥かに超えるものです。

実感を伴う「共感力」が信頼を築く

──介護のスキルとは、人生経験を積むほどに磨かれていくものなのですね。

森谷さん:ケアマネジャーの仕事においても人生経験は役立ちます。私の仕事は利用者さんやそのご家族の困りごとを伺い、思いに沿った介護サービスをつなぎ合わせ、生活に落とし込むことです。最初に1週間のスケジュールを決め、毎月の訪問でアップデートしながら自立支援を目指します。しかし、信頼関係がない状態で提案をしても受け入れられないでしょう。​
だから、私はまず「相手を知る」ことから始めるようにしています。生まれや育ち、家族構成、キャリア──傾聴を通して相 手の思いに触れ、寄り添うことで信頼関係を築いていきます。もちろん「相手」の中にはご本人だけではなくご家族も含まれます。その際に自分自身に同様の経験があれば、より深く共感できるはず。義父母と夫を看取った経験や、息子夫婦・孫と暮らし ている経験が、利用者と介護者、双方の立場に寄り添う土台になるのです。

家族のように支え、共に自立を育む

──利用者さんにとっては、経験豊富な森谷さんは心強い存在なのでは?

森谷さん:「森谷さんじゃなきゃダメ」と言って頼ってもらえると嬉しいですね。私の仕事は24時間対応で、集中の糸を切らさないよう意識する生活が続いていますが、負担だと感じたことは一度もありません。むしろ、毎日が楽しいんです!

菅沼さん:頼られると嬉しいですよね。ヘルパーの訪問を楽しみにし てくださっている利用者さんもいて。自立支援を目指す過程で、一緒に料理をする場合もあるのですが、中には献立を考えて食材まで用意して待ってくれている方もいらっしゃいます。そうして共に過ごすなかで、少しずつ利用者さんのできることが増えていき、ヘルパーから卒業したときは大きなやりがいを感じます。一方で、人生の最期に直面するシーンもゼロではありません。家族として救急車に乗ることもできず、時間が来れば無理やりにでも割り切って次の利用者さんのお宅に行く─ ─。それでも、学生時代に介護の世界に出会って以降、まっすぐに突き進んできたこの道に迷いはありません。

​あとがき

印象的だったのは、森谷さんの花が咲くような笑顔と、その森谷さんに向けられる菅沼さんの信頼のこもったまなざしでした。お宅訪問時にイレギュラーが発生した際には、ヘルパーとケアマネジャーが連携するシーンも日常茶飯事とのこと。
1日に数回、休日にも電話をするほど密に連携しているそうで、そこには仕事の関係を超えた「絆」が感じられました。お二方の温かい関係性 が、地域を照らしているようでした。

市民ライター 三代知香 ​

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プロ特集
​居宅介護支援事業所「まごの手」を管理するケアマネジャーの森谷和代 さん
看護師になったきっかけはフローレンス・ナイチンゲール。森谷さんの献身的な姿勢は、まさに憧れを体現している。​
プロ特集
​社会福祉法人吉城福祉会で訪問介護のヘルパーとマネジメントを担う菅沼由香里さん​​
古川中学校の福祉委員会を経て介護の道へ。短期大学で介護福祉士の資格を取ったのち、4年制大学に編入し、社会福祉士の資格も取得。