8月3日(土)市役所
薬草による健康づくりを進める飛騨市と富山大和漢医薬学総合研究所との連携事業である「第3回市民向け健康講座」が開かれました。この講座は今年度全5回にわたって開かれています。今回は同研究所資源科学領域・庄司翼教授を講師に、植物が医薬や有用成分をつくる理由を植物生理学の立場から解説していただきました。
まず、植物を構成する化合物が「薬」として、あるいは「毒」として働く理由を、シカで知られる奈良公園に自生するイラクサを例に取って説明されました。イラクサはシカにとって大切な食料ですが、園内から徐々に姿を消してしまったため、イラクサは鹿に食べられるのを防ぐため、ヒスタミンという毒を持つ棘(とげ)を通常の50倍以上も多く持つようになり、身を守っているそうです。
講師は漢方薬の毒性に関しても、さまざまな事例を取り上げて紹介しました。毒性の強いトリカブトは加熱など人の手を加えることで「附子(ぶし)」という薬に生まれ変わります。また、猛毒のベラドンナ(ナス科)は瞳孔を拡大する作用があり、眼底検査などで利用されています。また、マラリアなどの伝染病の薬として用いられるクソニンジンも毒性を備えています。
植物が毒を持つ理由は主に身を守るためですが、例えば高山に毒性の植物が多いのは、標高の高い山は植物が増えにくいため、毒をたくさん使って身を守っているそうです。
また、庄司教授は資源開発分野の専門家であり、和漢薬用植物を材料に薬用天然化合物の改良にも取り組んでいます。講座では植物生理学の話題とは別に、植物の組織培養や遺伝子組み換え、園芸植物のペチュニアを用いた「バイオ創薬」の開発といった研究などについても紹介していました。
今回の講座を通じて、参加者からは「薬草が人気ですが、植物は薬にもなり、毒にもなるということが分かり、学びが大切だと思いました」「薬草だからといって飲み過ぎたりせず、副作用にも気をつけなければいけないと思いました」といった声が聞かれました。