8月26日(月曜日) 市役所
「技能実習」制度に替えて「育成就労」制度を新設するといった法改正が行われたことを受け、主に飛騨市内の企業の経営者や人事・労務担当者などを対象に、外国人を雇用する際の基礎などについて学ぶセミナーが市役所で開かれました。
当日は「~飛騨地域の実情から学ぶ~外国人雇用の基本と活用セミナー」をテーマに開催しました。技能実習生の共同受入や特定技能外国人支援などに取り組む高山市の未来創造協同組合の代表理事で税理士の松井正勝さんが「外国人雇用の知っておくべき基礎知識」の演題で基調講演を実施。また、同組合事務局長の加我早絵さんが「飛騨地域の外国人材受入事例紹介」と題し、飛騨地域における外国人材受け入れの現状や課題、成功事例などを紹介したり、技能実習生が感じている生の声などを紹介しました。
松井さんは、外国人技能実習制度は本来、発展途上国などの人が日本で技術や技能を学ぶことで、その母国の経済発展を担う人材を育てる「国際協力」を目的に創設されたと指摘。技能実習は、労働力をまかなうための手段として行ってはならないという理念があるにも関わらず、実際の運用とは大きな矛盾があり、国際社会からも批判されていると説明しました。
このように現実と乖離している技能実習法の改正が進められた結果、新たに「育成就労」制度が設けられたと紹介。新制度のメリットやデメリット、課題についても説明しながら「受入側が、外国人労働者の安定した収入やキャリア形成、衣食住の確保、働きやすい職場の整備を進めないと、せっかくの新制度が生きてこない。外国人材との協働を進め、永続的に成長・発展する企業づくりを」と呼びかけました。
加我さんは、飛騨地域で働く外国人労働者は昨年10月現在で263事業所に1,075人いると報告し、かつては中国籍の人が多数を占めていましたが、現在は多様化している現状を紹介しました。また、飛騨地域で長期にわたって働いている外国人材から聞き取りをした生の声も紹介しました。「自然豊かで美しい場所がたくさんある」「人が優しく親切」などの声がある半面、「冬の寒さと積雪の多さが大変で、暖房費の負担が大きい」「移動手段が徒歩や自転車に限られて不便」「時給が安い」などの声もあると説明。採用のミスマッチ防止や受入体制の整備のコツなど、外国人材の受入成功に向けたポイントを示し、マイナス面をいかに減らすかが中長期で働く外国人を雇用する際の課題だと強調しました。
来日して2年目というミャンマー出身のヌ・イン・ウィンさんへのインタビューもありました。治安が良いという理由から来日を決めたこと、料理が好きで魚の加工の仕事を選んだこと、住んでいる高山市の人たちが優しいこと、ゴミの分別が難しいことや冬の寒さが厳しいこと、父母に家をプレゼントしたり自分の店を持ちたいという夢があることを話しました。
セミナーに参加した医薬品関連企業の人事労務担当の男性は「飛騨市という地域で長く働く環境を整えてあげることで、多様化の中でも、飛騨市を選択していただける可能性を感じました」、また建設関連企業の人事労務担当の男性は「人手不足で、もう現場が回らない状況なので、外国人材の雇用は避けて通れないと思っています。今日はいいきっかけになりました。新旧の制度の違いや外国人材の生の声を聞けたのが良かったです」と感想を話していました。