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プロフェッショナルな水道屋さん(市民生活を支えるプロ特集)

印刷用ページを表示する掲載日:2025年7月8日更新

なぜ「いま」職人なのか? プロフェッショナルな水道屋さん

DIY(Do It Yourself)という言葉が流行し、素人でも家のリフォームや修理などに挑戦しやすい時代。情報にあふれ、便利な道具が簡単に安く手に入る時代。それでも人々が"職人"を頼るのには理由があります。「市民生活を支える職業や一流の技術を有する市民ら」に光を当てる特集の第4弾に登場するのは、水道業界の" 職人"たち。ひだ管設備協同組合で代表理事を務める土洞辰巳さん(写真中)、副理事長の神出吉朗さん(写真右)、 理事の森下英樹さん(写真左)です。"職人"だからこそ成せる仕事の価値に迫ります。

「当たり前」と共にある仕事

──水道屋さんのお仕事には、具体的にどんなものがありますか?

土洞さん:家を建てる際の配管工事から、水回りの器具付け・修理、道路下に埋まっている水道管の修理まで、 仕事の内容は多岐にわたります。身近な例だと、トイレが詰まったときや、シャワーのお湯が出なくなったとき に駆け付けるのも私たちの仕事です。

森下さん:寒い時期になると、水道管が凍結して水が出ないといった電話がひっきりなしに鳴ります。その原因の多くはヒーターのつけ忘れなので、これからの時期には注意してほしいですね。

職人から見たDIYに潜む危険

──いざ水回りのトラブルに見舞われたら、焦って自分でどうにかしようとして余計に事態を悪化させてしまいそうです……。

土洞さん:内容によっては、すごく器用な人ならどうにかできる可能性もゼロではありません。 ただ、修理が不完全だとまたすぐに故障したり、最悪の場合事故の原因になったりするため、おすすめはしないですね。

──失礼ですが、プロの目から見ると、素人が手を入れた痕跡は分かるものですか?

土洞さん:必ず分かります。先ほどの例でいうと、凍結防止のために水道管に巻かれているヒーター。巻く方向が逆だったり、巻くべき所に巻かれていなかったり。深刻なケースだと、線と線が重なって巻かれていたことも あり、発火のおそれがあるためヒヤリとしました。 安全性を含めた完成度の面で、プロとそれ以外とでは大きな違いがあります。

職人のポリシーで守る市民の生活

──同じプロでも、経験年数が5年の人と30年の人とでは何が違いますか?

森下さん:私は水道業歴36年ですが、場数を踏んでいる分、イレギュラー時の対応力があります。今なら落ち着いて対処できることでも、新人の頃は慌ててしまい……。例えば、シャワーの修理をした時に、管の中でネジが折れてしまって、取り出し方がわからず真っ青になりました(笑)。実はネジを取り出すための道具があるのですが、当時はその存在を知らなくて半べそ状態でしたね。

──長年の経験があってこその安定感なのですね。

森下さん:実は、ベテラン同士でも施工跡を見たら違いが分かるんですよ。ゴールは同じですが、そこにたどり着くまでの進め方は三者三様で、私たち職人は各々のやり方にポリシーを持っています。

神出さん:職人の間には「責任施工」という言葉があります。自分が手がけた仕事には最後まで責任を持つという意味です。水回りの器具付けにしても、付けて終わりではありませ ん。その後のメンテナンスも視野に入れ、長くお付き合いしていく覚悟で施工をしています。

夜中でも駆け付けインフラを復旧

──長期的に水回りを見てくれる存在がいると心強いですね。緊急度の高い依頼も多そうです。

森下さん:土日や夜中に出動することも珍しくありません。過去には、旅行先から飛んで帰ってきたこともありました(笑)。 今年2月、最大400戸に水を送る主要な水道管のつなぎ目から水が漏れ、断水が発生したことがあります。土曜日の夕方に市の水道課から連絡があり、現場に駆け付けると、故障箇所から勢いよく水が漏れ出ていました。道路には雪が積もっていたのですが、そこだけ溶けていたほどです。一人ではとても対応しきれないと判断し、組合の水道業者を呼び集め、夜通し修理を行いました。資材を集めるところから始まり、復旧が完了したのは明け方3時頃でした。

──大規模な工事を行う際には、水道屋さん同士で連携することもあるんですね。

土洞さん:はい。災害時に復旧工事を行うときも、組合の水道業者で連携します。2018年7月に大雨が降り、古川町末高区で大規模な断水が発生した際にも、組合員を呼び集めて対応しました。

だから、この仕事は飽きがこない

──大変なお仕事ですね。

森下さん:そうですね。少しずつ改善されているとはいえ休みは決して多くないし、覚えることは多いし、楽な仕事ではありません。

神出さん:家を建てるとき、工程の最初から最後まで携わるのが水道業者です。その分、幅広い知識が必要とされます。だからこそ飽きがこないというのは、この仕事の魅力です。

土洞さん:ひとつとして同じ工事はなく、毎日のように変化があります。この仕事に就いて「つまらない」と感じることはないと断言できますね。

あとがき

取材当日、部屋に入ると作業着を身につけた男性3人がソファにずらり。最初は、職人特有の重厚なオーラに圧倒されましたが、豪快に笑いながら噛み砕いて話してくれる様子に、徐々に親しみやすさを覚えていきました。一方で、職人としてのポリシーの話になると表情ががらりと変わり、真剣な眼差しになったのが印象深かったです。職人のプライド、責任感。そのかっこ良さを垣間見た瞬間でした。市民生活の「当たり前」を守るため、ときには人知れず活躍する水道屋さん。直接会う機会はそう多くありませんが、8年に1回、水道メーターの交換で各家を訪問します。そのタイミングで、職人のかっこ良い仕事ぶりを見ることができるかもしれません。

市民ライター 三代知香

水道業界の” 職人”、ひだ管設備協同組合
水道業界の” 職人”、ひだ管設備協同組合 工事の様子