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プロフェッショナルなゴミ処理職人(市民生活を支えるプロ特集)

印刷用ページを表示する掲載日:2025年7月8日更新

ゴミの分別は誰のため? プロフェッショナルなゴミ処理職人

この青い袋の山は、資源ゴミとして再利用されます。同じゴミでも、黄色い袋に入るか青い袋に入るかで異なる運命をたどるのです。 ゴミの分別はどうやら環境に良いらしい。大多数の人が知っていることです。では、自分自身がゴミの分別を徹底しているか? そう問われ、自信を持って「はい」と答えられる人がどれほどいるでしょうか。きちんと分別されていないゴミが大量にあるなかで、それらを適正に処理してくれているプロフェッショナルがいます。今回は、飛騨市リサイクルセンター施設技師長の松葉健一(写真左)さん、飛騨市クリーンセンター施設技師長の倉家茂彦(写真右)さん、同センター施設長の中田賢一さんに、ゴミ処理の裏側や、持続可能な地域づくりにかける思いについて伺いました。

炉の温度調節で適正にゴミを燃やす

──市内全域から集まるゴミをどのように処理しているのですか?

倉家さん:燃やすゴミを処理するクリーンセンターでは、現場スタッフは10人いて16時間3交替制で業務を行っています。2人が2つの炉をそれぞれモニターで監視する担当、もう1人がクレーンを使ってゴミ袋を破り、燃えやすいゴミと燃えにくいゴミを均等に混ぜ合わせる担当です。例を挙げると、生ゴミは水分を多く含むため燃えにくく、炉の温度を下げる原因になります。低温で燃やすと有害ガスが出やすくなるため、紙やビニール系の燃えやすいゴミと混ぜ、炉の温度を調節するのが重要です。

分別漏れは手作業で一つずつ取り除く

松葉さん:リサイクルセンターは資源ゴミの選別を行い、リサイクル業者に引き渡して市の資源を有効に循環させる役割を担っています。選別作業を担当するのは主にシルバー人材の方々です。プラスチック製容器包装の選別を4名の方々で、紙類の選別を3名、粗大ゴミの解体を3名で行っています。 同じ資源ゴミでも種類が異なる物が混ざっていると、業者の機械設備故障などの原因となるため、現場スタッフが袋を一つずつ開けて手作業で選別します。例えば、見た目はペットボトルに似ていてもプラスチック製の容器が混入しているケースがあるのですが、ベテランさんは慣れたもので形状を見てどのメーカーの容器か素早く判断し取り除きます。

──手作業って大変ですね。自分がきちんと分別できているか、急に不安になってきました……。

松葉さん:よくあるのが、紙類に古紙(段ボールや新聞紙・雑誌、牛乳パックなど)が混ざっているケースです。 たとえ細かくちぎられていたとしても、古紙は紙類として扱われないので一つずつ手で取り除く必要があります。分別に迷ったときはリサイクルセンターへ問い合わせるか、ゴミ分別アプリ「さんあ〜る」で検索してみてください。かなり網羅されているはずです。

紛れ込んだ金物が機械トラブルの原因に

──ゴミの分別ができていないことによるトラブルはあるのでしょうか?

倉家さん:燃やすゴミの場合は、年に数回ありますね。ひどい例だと、スプレー缶にガスが残っていたことが原因で、ゴミをためる場所から火が出たり、炉内で爆発が起こったり。以前、それで炉内の監視カメラが大破したこともありました。不幸中の幸い、その時はゴミ処理に影響はなく作業を続行できたのですが、別の現場では、灰を運ぶベルトコンベヤーのチェーンが金物で切れて3〜4日ゴミ処理ができない事態になりました。

──その間にたまったゴミはどうするのですか?

倉家さん:基本的に、焼却時間は朝5時から夜9時までの16 時間ですが、たまったゴミを処理するために土日返上でスタッフに出勤してもらった例もあります。

子どもたちにゴミの負債を残したくない

──何でも燃える、という考えは危険ですね。

倉家さん:トラブルの原因になることに加え、燃えにくいゴミを処理するにはその分の火力が必要です。燃料代がかさみ、結果的に市の負担が増え、環境にも多少なりとも悪影響が出ます。

松葉さん:燃やすゴミが減ればコストを抑えられ、資源 ゴミの中には増えた分だけ市の収入になるものもあります。ガラス製食器や磁器などについては埋立ゴミとなるため、それらを大事に長く使うといった一人ひとりの心がけも環境保全の観点では大切です。

──日常の中で環境問題について改めて考えるきっかけって、なかなかない気がします。

中田さん:私自身、環境問題を強く意識するようになったのはこの仕事を始めてからです。この記事をきっかけに燃やすゴミを減らし、限りある資源を有効に活用しようという考えが広まればと思います。

松葉さん:私の場合、きっかけは我が子の存在でした。無闇にゴミを燃やしたり埋め立てたりすることは、次世代に負債を残す行為ともいえます。それを払うのは我が子や孫かもしれません。我が子へ負債を残さず、生まれ育ったふるさとが長く続くようにという願いを込めて日々仕事に向き合っています。

あとがき

環境保全に対して、どこか他人事のような感覚でいる人は少なくないでしょう。環境に配慮することは地球に生きる者の半ば義務ですが、義務感だけでは向き合えないこともありますよね。 でも、可愛い我が子のため。毎朝、道で元気よく挨拶をしてくれる子どもたちのため。今回、取材に協力してくれた 方々を含め「顔の見える誰か」のためと思えば意識してみようという気持ちになれるのではないでしょうか。5月1日の区長配布で、ゴミの分別やゴミ処理の流れについて詳しく解説したパンフレットを配布しています。ぜひ熟読し、ひだっ子の未来を共に守りませんか?

市民ライター 三代知香

ゴミの分別は誰のため? プロフェッショナルなゴミ処理職人
ゴミの分別は誰のため? プロフェッショナルなゴミ処理職人
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