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プロフェッショナルな給食調理師・栄養士(市民生活を支えるプロ特集)

印刷用ページを表示する掲載日:2025年7月8日更新

ひだっ子に安心・安全で健康的な「おいしい」を プロフェッショナルな給食調理師・栄養士

学校で一番好きな時間・好きだった時間が「給食」という方も少なくないのではないでしょうか。 楽しい食事の時間の裏には、給食調理師・栄養士の並々ならぬ努力と工夫があります。今回取り上げるのは、神岡町内の保育園・小中学校の給食500食をまかなう飛騨市神岡給食センター。専門調理師の川上さゆりさん(写真左) と学校栄養職員の滑谷さくらさん(写真右)に、大量調理の難しさや厳しい衛生管理の実態、地域の子どもたちへの思いを伺いました。

調理師・栄養士で密に連携し、献立を確定

──それぞれの役割と、給食作りの流れをお聞かせください。

滑谷さん:献立作成や食材の発注、児童・生徒への配布資料作成などを栄養士が担当し、食材の検収と調理を調理師さんが担っています。献立は、ある程度システムで自動生成されますが、アンケート調査をもとに児童からのリクエストを反映したり、価格を踏まえ旬の食材を取り入れたりするのが私の仕事です。最近は、鶏肉のレモン揚げが特に人気ですね。学校の授業の一環で作成した献立を出すこともあります。調理師さんとの献立会議を2〜3回経て最終的な献立が決まります。

川上さん:大量調理の観点から難しい組み合わせについては差し替えを提案したり、似たような献立や食材が続く場合は翌月にずらすことを打診したりします。また、揚げ物をする際は、油が汚れにくい食品から順に揚げ、最後に魚などの汚れやすい食品を揚げて、油を無駄なく使い切るように工夫しています。

釜と野菜の特徴を捉え、加熱するプロの技

滑谷さん:ベテランの川上さんから日々学ぶことばかりです。給食センターによって設備が異なり、ベテランの調理師さんは設備に合わせた適切な調理のノウハウを持っています。

川上さん:釜には、ガス式・蒸気式・IH式の3種類があるうち神岡給食センターではIH式を使っており、その特徴を踏まえ適切に加熱する必要があります。例えば焼きそばの調理では、後から調味料を加えると温度が下がるため、最初に野菜を炒めて調味料を入れ、その上に麺をのせて蒸します。蒸気が上がるタイミングを見計らい、一気に混ぜることで、温度を保ったまま調理できるのです。

──混ぜるタイミングは経験によるものなのですか?

川上さん:もちろん、加熱時間と温度は決まっていますが、細かな動きに関しては調理師の裁量で進めます。焼きそば以外の例では、煮込み料理において同じ食材でも季節によってニンジンやイモなどの野菜のやわらかさが異なるため、煮込む時間を微調整するのがポイントです。

川上さん:特に大量調理では、釜や食材の特徴を把握し、適切に加熱することが重要であり、これが家庭での料理との大きな違いです。これは経験に左右されるため、ベテランの調理師と経験の浅い調理師がペアを組み、ノウハウを受け継いでいきます。調理の8割はシステム化されていますが、残りの2割は調理師の腕が活かされる部分です。

体調不良は即報告!衛生管理のための関係構築

──加熱が不十分だと、食中毒のリスクも高まりますよね。衛生管理上、気を付けていることは何ですか?

滑谷さん:毎月2回検便を実施し、冬季はノロウイル スの検査を月に1回行います。調理師さんは調理場に入る前に二度手洗いし、配缶(※)前に二度手洗い、各工程の間にも必ず手洗いをします。さらに、生肉・生魚などを扱う汚染区域と非汚染区域は建物の構造上分かれており、区域ごとに担当者を分け、着用する白衣やエプロン、履き物についても色分けを行い、着替えと手洗いをしないと行き来できないように衛生管理を徹底しています。(※食缶の中に給食を入れること)

川上さん:私たち調理師は、自分自身だけでなく家族の健康状態も把握する必要があります。家族に下痢や嘔吐の症状がある場合は、出勤前に職場へ必ず連絡します。そのため、体調不良時に隠さず報告しやすい職場環境づくりが大切です。給食を食べる子どもたち全員に影響を及ぼす可能性があるため、常に緊張感を持って業務にあたっています。職場のトイレ掃除でもマニュアルを厳守し、複数の工程を経て清潔な状態を維持。もちろん、異物混入のリスクにも細心の注意を払っています。

塩分控えめでもおいしさを引き出すひと手間

──子どもの口に入ることを考えると、健康への配慮という点も気になるところです。

川上さん:神岡給食センターでは、以前から汁の塩分濃度を0.4パーセント以下におさえています。

滑谷さん:人間がおいしいと感じる塩分濃度は0.8パー セントといわれていますが、調理師さんがしっかりと出汁をとり、さまざまな具材の味が加わっているため0.4 パーセントでもおいしく食べることができます。

川上さん:短時間で一気に出汁をとるのではなく、水に30分漬けた後、さらに60分間弱火で煮込むことで旨みが引き出されます。

食缶の残量で感じる「おいしい」の声

──地域の子どもたちとは、どのような接点がありますか?

滑谷さん:月に1回、全学年を回ることを目標に、給食の時間に5分程度の食育指導を行っています。献立に旬の食材を取り入れ、それをテーマに話をします。例えば、9月のテーマは飛騨の伝統食材である「あきしまささげ」でした。地元の食文化を伝えることで、子どもたちの食生活を豊かにするとともに、伝統を受け継いでいくのが狙いです。

川上さん:私は子どもたちと接する機会はほとんどありませんが、小学校に設置された「給食ポスト」を通じて、子どもたちからの質問や感想を受け取っています。また、ご家庭と給食センターとのつながりを築くために、私たち調理師が作成した給食のレシピカードをポストの横に置いて配布しています。

──最後に、やりがいは何ですか?

川上さん:返ってきた食缶の残量が少なければ、「今日の給食はおいしかったんだ」と嬉しくなります。毎日、学年・ 組ごとの残量を調査し、栄養士さんと相談しながら次に活かしています。

滑谷さん:子どもたちが「おいしい」と言って食べてくれたらそれが一番ですね。

あとがき

味の追求、衛生管理、健康への配慮、食べる人とのコミュニケーション。給食に関わる仕事は、どれ一つ欠けても成り立たないものだとわかりました。今日食べた給食や、あの頃の給食を作ってくれた人に、改めて「ごちそうさま」と言いたいですね。

市民ライター 三代知香

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