9月14日(土曜日) 飛騨市文化交流センター
利用されない木材や草、竹、生ごみを微生物・菌などで分解させて作る完熟堆肥を用いた有機農法の提唱などで知られる「菌ちゃん先生」こと吉田俊道さんの講演会「食は身体づくり心づくり~菌ちゃん先生の野菜の世界」が開かれました。
「家族みんなで心も体も元気になろう」をテーマに、安全な食と心身との関連などについて考え、食の大切さを学んでもらおうと飛騨市有機農業推進協議会が開催したものです。同協議会の雲英顕一会長は「この講演会をきっかけに有機農業、自然栽培をする農家だけでなく、家庭菜園をする人たちも増えて、余った野菜があれば学校給食に提供するなど、子どもたちに安全安心な食材をたくさん届けられるような飛騨市になっていくといいなと思います」などとあいさつしました。
吉田さんは講演で、有機農業において重要なのは、単なる堆肥ではなく、しっかりと発酵の進んだ完熟堆肥だと示しました。自身の体験をふまえながら「人間が好む食べ物は発酵が進む世界の食べ物で、腐敗の進む世界の食べ物を好む生き物は虫やミミズなどの分解者。だから、畑でしっかりと発酵が進んでいれば、人間が好む健康な野菜が育ち、不都合な虫は寄り付かない。だから無農薬栽培が可能になる」と強調。「この世界は発酵と腐敗の世界に分かれており、それぞれの世界に住む生き物が違う」と説明しました。
また、「農薬で虫や菌を全滅させても意味がない。虫や菌が何もいない農地に新たな虫や菌がやってくれば、抵抗するものがなく、あっという間に広がってしまう」「私たちの周りも無菌になりすぎている」と指摘し、さまざまな菌が混在する多様性のある状態が大切だと強調。畑の腐敗状態を解消するためには、腐敗物を空気に触れさせて分解させるよう休耕の時期に天地返しをすることや、未熟気味の堆肥を入れる場合は浅く入れて耕すことなどをアドバイスしました。
健康被害などが懸念されても因果関係がはっきり証明されていない農薬についてもふれ、「欧州では『念のために』禁止している。日本では『はっきり分からないから』許可している。これは気候の違いなども影響しているから良し悪しは言えない」と述べた一方、実験結果などを示して虫や菌が付かない健康な野菜は抗酸化力と栄養価が高いと指摘しながら、「こうした健康で安全な美味しい野菜を作っている生産者を買い支えることが、農家の取り組みをうながすことにつながる」と話し、熱意のある農家の応援を呼びかけました。
トークに熱がこもって客席に降りたり、ジョークを交えた軽妙な語り口に会場からは終始笑いが絶えず、有機農業や安全な食などに関心のある皆さんが熱心に耳を傾けていました。有機栽培に関心があって高山市から参加した上嶋あすみさんは「思っていたより面白くて、ためになる話でした。家には小さい子がいるので、こうした環境にふれさせるのは親の責任だと思いました。来年も参加したいですし、有機野菜をつくってみえる方には頑張ってほしいです」などと感想を話していました。
後半は、市内で有機栽培などに取り組むソヤ畝畑の森本悠己さん、井関農園の井関貴文さん、サノライスの佐野朋之さんらも登壇し、吉田さんとの対談がありました。